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【ドキュメンタリー】22歳でクビ宣告…新天地・巨人で再起をかける吉川

16 9月 , 2015   Video

男は、戦力外通告から這い上がってきた。読売巨人軍、吉川大幾(23)。去年まで、ミスター・ドラゴンズ、立浪和義の背番号3を背負い、大いに期待されていた。しかし、その背番号に見合う活躍は出来なかった。そしてわずか4年、22歳の若さで戦力外通告。そんな男が、新天地でチームの危機を救う。セ・リーグの優勝争いが佳境を迎える中、巨人で再起をかける男の戦いを追った。


今シーズン、苦しい戦いが続いている巨人。投手陣は、先発の柱として期待した内海、杉内が離脱。リリーフ陣も逆転される場面が目立った。打撃陣にいたっては、12球団最下位。阿部、坂本、村田といった主力選手が故障するという、非常事態が続いた。それでも、史上稀に見る大混戦の中、首位争いに踏みとどまっている巨人。その1つの要因としてあげられるのが、他球団からやってきた男たちの活躍だ。その中の1人、吉川大幾(23)。彼は、6月4日のオリックス戦で、強烈な光を放った。巨人、1点リードで迎えた9回。1アウト満塁にされ、一打逆転の大ピンチ。ヒット性の強烈な当たりを見事キャッチし、ダブルプレーでゲームセット。この超ファインプレーで、チームに勝利を呼び込んだ。
名門・PL学園の出身の吉川が、その名を全国の野球ファンに刻んだのは、甲子園で放ったホームラン。更に50m、5秒9の俊足。走攻守3拍子揃った、超高校級プレーヤーとしてプロのスカウトの熱い視線を一身に集めていた。そして2010年、ドラフト2位で中日に入団すると、将来、チームの中心選手になると目され、ミスター・ドラゴンズと呼ばれた立浪の背番号3が与えられた。そんな周囲の思いに、吉川も自信を持っていた。プロ1年目の春季キャンプは、異例の一軍スタート。落合監督が就任した2004年以降、高卒ルーキーの野手の一軍スタートは初めてのことだった。しかし、プロの世界は甘くはなかった。1年目は、一軍の公式戦に一度も出場できず、二軍でも打率1割台、ホームランはゼロ。2年目も3年目も、二軍での成績は一向に上がらなかった。そんな吉川にファンは、容赦ない野次を浴びせる様になった。こんなはずじゃない。そう思えば思うほど結果が出せない、負のスパイラルに陥り、守備でもつまらないミスが増えた。そんな自分に怒りが沸いた。だが、そんな吉川の姿は、首脳陣に悪い印象しか与えなかった。その状況は、プロ4年目になっても変えることは出来ず、去年10月。秋季練習中だった吉川は、突然、落合GMに呼び出されあの宣告を受けた。プロ生活わずか4年でのクビ宣告。何が起きたのか理解できず、吉川は、ただ呆然とその日を過ごしたという。悔やみきれない思いだけが沸き上がった。そんな時、救いの手を差し伸べてくれたのが、巨人だった。もう二度と同じ過ちはしない。吉川はその思いを強く心に誓った。
新天地・巨人で、プライドを捨てた23歳の再起をかけた戦いが始まった。どんな形でもいい。チームに必要とされる選手になろうと、吉川は二軍で懸命に汗を流した。サード・ショート・セカンド。望まれるポジションならどこでも守る。そんな強い意識で、練習に取り組んだ。更に、中日時代に取り組みながらも諦めていた、スイッチヒッターに改めて挑戦。自らの武器である足を最大限アピールすると決めた。そんな吉川にチャンスが訪れたのは5月20日。この時チームは主力の不振などで、先発メンバーが固定できない状態。そんな中、サードの村田がケガで離脱。どこでも守れる吉川が一軍に呼ばれたのだ。そして、5月31日。吉川は、巨人に来て初めて先発メンバーに抜擢された。このチャンスは絶対にものにする。吉川は燃えていた。相手は、東北楽天のエース則本。見事、期待に答えた。更にこのあと、タイムリーツーベースも放ち、2安打1打点。吉川は与えられたチャンスをしっかりと掴み取った。その後、守備固めや代走での出場を重ねた吉川は、8月4日、首位ヤクルトとゲーム差なしで迎えた大事な一戦で、チームを救う働きを見せる。この日、坂本が試合直前、腰の違和感を訴え欠場。急遽、吉川がスターティングメンバーに指名されたのだ。ショートでの堅実な守備。更にバッティングでも、2本のヒットを放ち1打点。吉川の活躍で巨人は首位に立った。
午前11時、試合開始7時間前。吉川は東京ドームにやってくる。そしてベンチ裏でコーチと早出の守備練習。ゴロの捕球と送球の繰り返しが延々と続く。吉川は、いつ、どんな場面、どのポジションで出場するか、あらかじめ予想することができない。そのため、こうした地道な練習の積み重ねが、大事なのだという。全体練習が始まると、吉川は、セカンド・サード・ショートと、微妙に動きが違う3つのポジションでノックを受ける。更に代走での出場も多い為、試合中でも、走塁のスペシャリスト、鈴木尚広から貪欲に技術を学ぶ。そして9月4日、横浜DeNA戦。この時巨人は、首位阪神と1.5ゲーム差の3位。これ以上、離されるわけにはいかない試合で、吉川が再びチームを救う。9回表、7-7の同点。代走・吉川が帰れば逆転という場面だった。そして、抜群のスタートを切った吉川が、果敢なスライディングを見せ、チームは逆転に成功。そしてその裏、セカンドの守備についた吉川が、イレギュラーバンドのゴロを見事キャッチ。ダブルプレーで絶体絶命のピンチを切り抜け、ゲームは巨人の勝利に終わった。まさに、吉川が勝利に導いたゲームだった。
現在も熾烈な戦いが続いている巨人。優勝争いが佳境を迎える中、吉川のされなる活躍に期待がかかっている。


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