スポーツ,ドキュメンタリー

【ドキュメンタリー】巨人 日本一奪還のキーマン プロ18年…走塁に懸ける男 鈴木尚広

2 12月 , 2014   Video

2位に7ゲームの大差をつけ、セ・リーグ3連覇を果たした、巨人。その記者会見の場に原監督と並んで出席した2人の選手。1人は、チームトップの12勝を上げた若きエース、菅野智之。しかし、もう1人はレギュラーではない、鈴木尚広だった。プロ18年目のベテランながら、年俸はチームの平均7000万円を下回る、4000万円。主に代走として起用される選手。


しかし、その鈴木が今シーズン幾度となく勝利を呼び込んだ。7月15日のヤクルト戦。同点で迎えた延長12回裏、一打サヨナラのチャンス。2塁ランナーの鈴木が帰れば、勝負が決まる。外野は前身守備。長打でない限り、ワンヒットでホームに生還するのは、厳しい状況だった。しかし、ブロックするキャッチャーをかいくぐり、右手でホームベースにタッチ。サヨナラ勝ちを呼び込んだ。
18年のプロ野球人生で、規定打席に達したことは一度もない。注目されることの少ない走塁の技術を高いレベルにまで極めることで、鈴木はプロの世界を生き抜いてきた。
1996年、鈴木は福島・相馬高校から、ドラフト4位で巨人に入団。しかし、5年間、一度も一軍に上がることができなかった。そんな鈴木の運命を変えたのは、2001年、監督に就任した、原辰徳だった。原監督は、就任直後に行った秋のキャンプで、すぐに鈴木の足に目をつけ、チームの秘密兵器になれる存在として期待していた。そして、2002年、鈴木は一軍に初昇格すると、その年の日本シリーズで魅せた。巨人王手で迎えた、第4戦。西武は6回、エース松坂をリリーフに送った。一方、原監督も勝負に出る。2対2の同点の場面で、3番・高橋由伸が、1塁に歩くと、その代走に、鈴木を指名した。盗塁を最も警戒しているこの場面で、いとも簡単に成功。さらに、相手の前進守備をものともせず、なんと2塁から一気に生還。鈴木の走塁で勝ち越した巨人は、この試合に勝利し、日本一に輝いた。

鈴木は、一瞬の戦いにおのれの全てを注ぎ込む。球場入りは、毎試合一番乗り。この日の試合開始は、午後2時。鈴木が現れたのはその7時間も前の、午前7時だ。8時にはストレッチを開始し、40分かけて入念に体をほぐす。その後、ウォーミングアップを行い、9時から独特のトレーニングが始まる。鈴木の練習でのこだわりは、体の軸を安定させる、バランスの取れた肉体作り。こうした地道な鍛錬が盗塁という一瞬の勝負を戦うのに欠かせない、滑らかに動くからだを作り上げるという。さらに、軸を安定させた体をしなやかなに動かすことが重要だという。鈴木の体には、横に動く柔軟性が備わっている。午前10時、ここからは全体練習に参加。ゲームでのわずかな出番で成功するために、鈴木はこの一連のメニューを年間144試合の前に欠かさず行う。試合が始まっても、ベンチに座ることは、ほとんどない。いつ出番が来てもいいよう、体を動かし続ける。こうした日々の鍛錬が、鈴木の走塁を支えている。
鈴木の盗塁成功率は、実に82%。これは、200以上の盗塁を記録した選手の中で、史上2番目。50mを5秒7で走る駿足。だが、その高い成功率は、足の速さだけでもたらしているわけではない。その最大の要素がセーフティーリードの幅。鈴木は、投手によって、リード幅を変えている。もう1つは、スライディング技術。鈴木のスライディングは、他の選手と明らかに違う特徴がある。ベースのわずか1m前ギリギリまで走る。スピードを落とさないこのスライディングはケガの危険性が高く、簡単には真似できない高度な技術だ。
今シーズン終盤の8月14日、2位の阪神と1.5ゲーム差で迎えた、8回。2-1と1点リードで迎えた巨人は、何としても追加点が欲しい。そこで、代走に送られた鈴木は相手バッテリーのミスをつき、見事、ホームに生還。そして、9月26日、巨人はセ・リーグ3連覇を果たした。鈴木も巨人史上5人目の通算200盗塁を達成。さらに、代走での盗塁106回という、日本プロ野球記録を樹立した。
リーグ優勝翌日、朝8時。そこには、いつものように、試合開始6時間前からトレーニングする、鈴木の姿があった。日本一奪回へ、その目はすでに先を見据えていた。
一本のヒットにも匹敵する、破壊力に満ちた、盗塁。代走という一瞬の勝負にかける36歳、鈴木尚広の走りから目が離せない。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です